◆そういえば、NVIDIAのOpenAIへの1000億ドルの投資がうまくいっていない件について、内情を明かしている記事が出ていた。OpenAI側で開発しているコード生成アシスタント(Codex)がいまひとつで、NVIDIA GPUで賄いきれない推論性能が必要になっているというのが背景にあるようだ。それでCerebrasなどをレンタルしているのではないかとのこと。Groqもその候補に挙がっていて、NVIDIAがGroqと技術提携したのもその背景が絡んでいるのではないかということらしい。いろいろな推論エンジンに手を出す(AMDにもだと思うが)ので、NVIDIAとしては面白くないのではないか、というのが、うまくいってないことの正体じゃないかということだった。まあ、いろいろあるね。
NVIDIA関連で、社内のエンジニアに、Anysphere Inc.のCursorというコード生成AIをカスタマイズして使わせているらしい。生成するコードの量が3倍に増えたが、当初の導入したままではバグ率が変わらなかったのでカスタマイズしたとのこと。
もうひとつNVIDIA。Vera Rubin向けHBM4について、サムスンが 今月後半に量産を開始するらしい。
以下、宿題の提出。2,3日前に、「TSMC熊本工場(FAB23)に3nmラインが建設されるが、3nmと言っても最小回路線幅ではなく、7nm以降は単なる商標となっている」と書いた。この「最小回路線幅」というのが、かつての半導体の微細化の象徴であったが、現在は数字と実態が合っていないということを説明したい。そもそも、この最小回路線幅の意味を、説明する必要があると思う。半導体プロセスでは、フォトマスクと露光機を用いて、いわゆる縮小コピーの要領で、回路を小さく焼付けてLSIを製造する。普段、私たちが縮小コピーするときに、縮小が行き過ぎると字がつぶれて読めなくなるのと同じように、半導体でも縮小の行き過ぎは回路の形成に失敗することになる。この、回路が故障しないぎりぎりの線幅まで縮小できるように技術的な工夫を行い、実現された最小の配線幅が、最小回路線幅と呼ばれている。
さて、この最小回路線幅を縮小するための工夫であるが、拡大や縮小と言うとレンズの話かと思うかもしれないが、半導体の世界では露光装置の光源の波長を短くする歴史となっている。プロセスノード(≒最小回路線幅)が1990年代の0.25umや2000年代の90nmといった世代では、光源には248nm(KrFレーザー)や193nm(ArFレーザー)と言った波長が使われていた。65nm世代以降は波長193nmのレーザー光を水に通す(ArF液浸)ことで134nm相当の波長に変換している。波長以上に細い形状(パターン)をどうやって実現しているのか、という疑問は当然あるが、回路の配線形状を焼き付けるときに光学補正をかける技術があり、一見何の模様かわからないマスクでも、単一波長のレーザー光を当てると所望の配線幅の形状ができるようになっている。また、配線密度を上げるために、同じ層に対して複数のマスクを用いる多重マスク化というテクニックもあり、フォトマスクを設計するCADもかなり複雑になった。
上記のような歴史があって、65nm世代以降の16nm, 14nm, 10nm世代までは、波長134nmの光源を使って、プロセスノード(≒最小回路線幅) が進んできた。Intelが14nmプロセスでSkyLake(2015年)を製造したり、TSMCが10nmプロセスでiPhone X(2017年)を製造していた時期の話になる。このあと、Intelは10nmプロセスで苦戦して、IceLakeを製造したのが2019年になっている。ここら辺が、ArF液浸露光の限界だったと言ってよいと思う。TSMCは7nm世代に移行しつつ、EUVの導入を始める。EUVは波長が13.5nmで、一気に10分の1になる。(全体に「世代」や「プロセス」や「ノード」と言った言葉が頻出するが、ほぼ同じ意味で使われていることに留意されたい)
少し想像が入るが、EUVはスループットが遅いので、多重マスク化などのテクニックが使いづらかったのではないかと思う。そうすると、波長以上に細いパターンを作ったり、配線密度を上げるのはちょっと難しいと思われる。ここを機に、最小回路線幅(≒プロセスノード)の微細化は、意味がすこし変わる。
10nmや7nm世代の時点では、インテルもTSMCも、トライゲート構造と呼ばれるFinFETに移行していた。FinFET以前のプレーナ型は、トランジスタの大きさ(幅)はゲートを縦長に伸ばして面積を増やす必要があったが、FinFETではFinの高さ方向で幅を稼ぐことが出来るので、いわゆる占有面積としては小さくすることが出来る。例えるなら、同じ世帯数が暮らすのに、平屋からマンションにすれば土地は狭くてすむのと同じである。また、Finどうしの間隔を詰めることが出来れば、それも面積の削減に有効である。狭い間隔でマンション群が建っているようなものだ。そしてこれは、TSMCの2nm(ナノシート)以降やインテルの18A(リボンFET)以降のGAA(ゲートオールアラウンド型)-FETでも同じである。
半導体のプロセスノード が進むということには、いくつかの意味や期待がある。その最大のものは、LSIが小さくなるということだ。同じ回路であれば、面積が小さくなることでウェハから取れるチップ数が増えて、コストが下がることが期待される。また、同じ面積のLSIであれば、より多くの回路が入って、同じコストで高性能になることが期待される。したがって、最小回路線幅が小さくならずとも、より多くの回路を入れることが出来れば、プロセスノードを進めてもよいことになる。こうして、FinFETでEUVを使う世代から、最小回路線幅は変わらずとも、プロセスノードだけが商標として進んでいくようになった。
では、プロセスノードごとの最小回路線幅は、何を見たらわかるかというと、半導体メーカーが指標としているロードマップがあり、一応はそこに準拠するようになっている。「一応は」というのは、準拠しないといけないという拘束力はないということだ。このロードマップは、10年ほど前まではITRSと呼ばれていた。現在ではIRDSと呼ばれている。IRDSには半導体産業全体のロードマップがあり、その中のリソグラフィに、トランジスタの形状や最小回路線幅のロードマップが示されている。
リソグラフィのロードマップには、最小回路線幅の定義に2つの種類がある。ひとつには、単純な配線の最小ピッチ(配線-隙間-配線の中心間の距離)が規定されており、配線は金属(メタル)なので、Mxxであらわされる。もうひとつはコンタクトテッドゲートピッチと呼ばれるトランジスタの配置密度で、トランジスタのゲートと、その横のソース/ドレインのコンタクト(端子)を挟んで、隣のゲートとのピッチが規定されている。細かく書くと、ゲート-隙間-コンタクト-隙間-ゲートで、このゲートの中心間の距離となる。 ゲートのピッチなので、Gxxと書く。2,3日前に書いたGxxMxxの正体は、このロードマップの数値であった。
ちなみに、2024年版のリソグラフィのロードマップでは、 2024年に3nmノードでG48M24、2025年に2nmノードでG48M22、2027年に1.4nmノードでG48M22となっている。ロードマップなので予測であることには注意が必要だが、上記で説明した数字の読み方に従うと、G48というのは、ゲート+隙間+コンタクト+隙間の値なので、単純に4で割るとゲートも隙間もコンタクトも12nmとなる。また、M22も配線と隙間の合計なので、単純に2で割ると配線も隙間も11nmとなる。EUVの波長が13.5nmであることを考えると、ゲートも配線も最小線幅12nm前後と考えてよさそうだ。
ロードマップが示す推移では、3nmノードから2nmノードではゲートピッチ(G)は変わらず、配線ピッチ(M)が-2nmになり、2nmノードから1.4nmノードではGもMも全く同じと言っている。TSMCやインテルがこれに準拠しているという確証はないが、目安としてはこの辺りの寸法と考えてよいと思う。プロセスノードが進むことで、より多くの回路が入るようになってはいるが、昔のムーアの法則のように一世代で倍の回路が入るようなペースではない。ムーアの法則がスローダウンした、と言われているのは以上のような状況を表している。
結論としては、繰り返しになるが、プロセスノードが進むということは、最小回路線幅とは別の工夫で回路の密度は上がっており、産業上の問題はないものの、プロセスノードが示す○○nm世代という数字は、最小回路配線幅とは乖離しているということである。以下は余談だが、シリコン結晶の格子定数は5.431オングストロームである。プロセスノード14Aとは、14オングストロームのことであり、この先のロードマップでは10Aを切って7A、5Aと進む。AI半導体需要はノードを先に進めることを要求し、トランジスタ構造がCFETになることで縮小率は上がる見通しである。5Aノードに進んだとき「何かおかしくないか?」と言われたら、上記の説明を思い出してもらえると幸いである。
長くなったが、説明したかったことは以上である。TSMCの熊本工場に、3nm世代の製造ラインが建設されるのは、素晴らしいことだと思う。
今日は朝、目が覚めたとき、窓の外が白くなっていて思わず二度見した。昼前に起き直してもまだり積もっていた。予報では昼過ぎから晴れだったが、太陽らしき光がぼんやり透けているだけで空は曇ったままだった。
雪が積もっている中、しょうがないので投票へ向かった。家族連れやお年寄りで、思ったより混んでいた。積雪といっても、日本海側の本気の雪に比べたら申し訳ないほどの量だが、雪があるだけで空気が冷たい。慣れない寒さで顔が少し痛かった。
寒さに負けて布団に戻っていたら、晩ごはんができていた。鶏肉と玉ねぎのカレー炒めで、カレー粉がかなり多めに入っていた。そのスパイシーさが体を温めてくれる。
