2026年4月27日

  • そういえば、インテルの次期Xeon7についてリーク記事が出ているようだ。

Xeon7 Diamond Rapidsは、Intel 18Aプロセスで製造され、2026年後半に発表と言われていたと思うが、2027年に延期になるのではないかとのこと。Diamond RapidsはPコアのみだが、シングルスレッドコアではないかとのうわさがある。同じIntel 18Aで製造されているClearwater Forstが、Eコアのみでシングルスレッドコアの製品だが、Xeon6+として3月初めに発表されている。こちらは2026年前半の発売と見られている。

同じプロセス世代で、Eコア系がXeon6+で、Pコア系がXeon7とかになるのは少しややこしい気がする。しかも両方ともシングルスレッドコアで、どう違うのかという気にもなる。ただし、Eコア系とPコア系では用途が違うことはインテルのWebでも説明されており、Eコア系はどちらかというとスループット重視で、Pコア系はHPCやAIのワークロードに耐えられる性能を備えている、とされている。Diamond Rapidsの次と言われているCoral Rapidsは2028年の予定だが、Diamond Rapidsが遅れてもCoral Rapidsが遅れることは無く、むしろ少し早まるかもしれないと記事は伝えている。

  • CPUのつぎはDRAM関連の話題。 

シリコンバレーのメモリ設計会社NEO Semiconductorから、次世代メモリ技術「3D X-DRAM」が発表されたようだ。概念実証(POC)を完了したとのこと。この技術は既存DRAMの約8倍の密度と容量を実現できる可能性があり、現在300層規模まで積層が進む3D NAND技術を応用することで、DRAM業界にとって約30年ぶりの大きなアーキテクチャ変革になると見られているようだ。DRAMは2014年に20nm世代へ到達して以降、微細化の進展が鈍化して、過去12年間の容量拡大が8Gb、16Gb、24Gbと緩やかな伸びにとどまっている。一方、3D NANDは現在300層に達しており、2027年から2030年にかけて1000層へ進化する見通しを得ているようだ。このとき、容量も128Gbから1Tb、さらに2Tbや4Tbへ拡大する可能性があると記事は伝えている。

DRAMチップを積層するだけであればHBMが既に実現しているが、DRAMのビットセルは1T1Cで、トランジスタひとつとキャパシタひとつがペアになっている構造のため、Flashメモリのような3次元積層は困難とされていたと思う。NEOは従来DRAMの課題だったコンデンサ構造を廃し、NANDと同様の「穴あけ・金属充填」方式を採用することで、多層化を容易にしたと説明している。既存の3D NAND製造設備を活用できるため、新規工場建設や巨額の設備投資を抑えられるようだ。現在は概念実証段階で、量産と実用化は2029年から2030年頃になる見通しらしい。もし実現すれば、HBM市場を支配するSK hynix、Samsung、Micron以外にも、キオクシアやWestern Digital、YMTCなど3D NANDメーカーが参入できる可能性があり、AI向けメモリ供給能力の拡大とコスト低下につながる可能性があると記事は伝えている。

この3D X-DRAMチップが、HBMのようなパッケージ内に入るメモリになるか、DIMMやSOCAMMのような主記憶になるかは、帯域幅によるかと思われる。電源電圧というか動作電力も気になる。期待を持って見守りたい。

  • 変わってAIとスマホの話題。 

OpenAIがスマートフォン向けAIチップの開発を進めているとの記事が出ている。チップ開発ではQualcommとMediaTekが協力し、中国のLuxshareも端末設計や製造に関与すると見られているようだ。量産開始は2028年を目標としているらしい。今回の計画は単なるスマートフォン開発ではなく、OpenAIがAIエージェントを前提とした新しい端末を目指している点が特徴のようだ。従来のアプリ中心というよりは、AIがユーザーの状況を理解しながら動作するような端末を構想しているとみられる。スマートフォンは利用者の位置情報や予定、通信履歴など多くの情報を扱うため、リアルタイムAIを実現するうえでは重要な端末になるような気がする。

チップベンダーを見ると、QualcommはSnapdragonでスマートフォン向けSoCを展開しており、MediaTekも世界有数のスマートフォン向けチップメーカーとして知られている。OpenAIが両社と組むことで、AIモデルだけでなく端末側の半導体まで含めた垂直統合を目指しているようだ。OpenAIはすでに独自AIチップ開発も進めているとされるが、今回のスマートフォン向けプロジェクトは、別の意味を持つのかもしれない。AIの競争はデータセンター向けGPUだけでなく、最終的には個人が手にするデバイスへと広がっていくと思われる。かつてスマートフォンが情報通信社会を加速させたように、AIネイティブな端末が次の変化をもたらす可能性があると記事は伝えている。 

  • AIつながりでNVIDIA関連。

Foxconnが、NVIDIAの新しい推論アクセラレータ「Groq 3 LPX」のラック製品を独占で組み立てるサプライヤーに選定されたようだ。またの名をLP30と言ったと思う。NVIDIAが取込んだGroq3で、1月のCESのときにはまだなかったが、3月のGTCでVera Rubin世代に組入れられた。チップの製造はサムスンの4nmプロセスとなっている。パッケージングもサムスンで、NVIDIAのNVLラインナップの中で韓国製は珍しいと思う。

Groq 3 LPXは、1ラックあたり256個のLPU(Language Processing Unit)を搭載し、640Tb/sの相互接続帯域と128GBのオンチップSRAMを備えるとのこと。記事によると、当初計画より前倒しで2026年第3四半期に出荷が始まり、初回出荷は約6,000ラック、2027年にはさらに1万ラックが投入される見通しらしい。Foxconnの劉揚偉董事長は、同社が現在週1,000台以上のデータセンター向けキャビネットを生産しており、年末までに週2,000台体制へ拡大する計画を明らかにしていると記事は伝えている。

  • データセンターつながりで最後に電力計算の話題。 

MITとMIT-IBM Watson AI Labの研究チームが、AIワークロードの消費電力を数秒で推定できる新手法「EnergAIzer」を発表したとのこと。AIブームに伴い、米国のデータセンター電力消費は2028年までに全米電力需要の最大12%に達する可能性があるとされており、電力効率の改善が大きな課題になっているらしい。従来の電力推定ではGPU内部の処理を細かくシミュレーションするため、結果が出るまで数時間から数日かかる場合もあったようだ。一方、EnergAIzerは、AI処理に現れる繰り返しパターンを利用し、電力消費を数秒で推定できるらしい。さらに実際のGPU測定データを補正項として組み込むことで、推定誤差は約8%に抑えられたと記事は伝えている。

EnergAIzerの利用者は、AIモデルの種類や入力長などの条件を与えるだけで、消費電力量を即座に見積もることができるようになる。GPU構成や動作周波数を変更した場合の電力変化も確認できるので、データセンター運営者だけでなく、アルゴリズム開発者やAIサービス提供者にとっても有用なツールになることが期待される。最近はAI推論の電力消費を巡る議論が活発だが、大規模運用環境では1クエリ当たりの消費電力中央値が0.31Whとの研究結果もあり、効率改善は現在も続いているようだ。AIの拡大と電力制約が同時に進む中、こうした推定技術の重要性は今後さらに高まりそうだと記事は伝えている。

2026年4月25日

  • そういえば、インテルファウンドリの14Aプロセスで、NVIDIA FeynmanのIOチップを製造するのではないかという、リーク記事が出ているようだ。一昨日もインテルファウンドリの外部顧客が、イーロン・マスクのSpace Xだろうというニュースがあったと思う。Intel 14Aプロセスは2030年くらいと見られていたと思うが、NVIDIAの次期GPU Feynmanは2028年の予定である。これだけいろいろうわさが出るということは、14Aプロセスの提供は早まるのだろう。FeynmanのGPU部分はTSMC A16プロセスを見られているが、インテルファウンドリに委託するのはIOチップだろうと記事は伝えている。GPUもチップレット時代になるということかもしれない。
  • インテルつながりでもう一つ。インテルのGPUラインナップで、どうもゲーミング用のディスクリートGPUが今年は出てこないようだ。リーク情報ではあるが、データセンター用のGPUのみ、今年後半に予定されているとのこと。現在市場に出ているGPUの最新版は、Panther Lakeに搭載されたiGPUで、Xe3(なぜかXe2と同じBattlemageという名前)となっている。Xe3PのCelestialが2026年に発売される予定だが、160GBという巨大なメモリを積んだデータセンター向けGPUカートリッジらしい。コンシューマーにはとてもじゃないが手が届かない値段になりそうな気がする。NVIDIAも、今年はRubinベースのゲーミングGPUを出す予定が無かったような気がする。メモリ不足が原因とは思うが、今年はコンシューマー市場は少し寂しい状況のようだ。
  • NVIDIAつながりで次の話題。Pony AI社がNVIDIAと共同で自動運転ドメインコントローラーを開発したようだ。NVIDIA Drive Hyperionプラットフォームをベースとしており、NVIDIA Drive AG Thorを搭載しているとのこと。AI演算の強化と新しいAIモデルに対応し、レベル4運転プラットフォームとして位置づけている。先月に、QualcommがSnapdragon Ride自動運転プラットフォームを、英国のWayveと共同開発するような記事があったと思う。 
  • Qualcommが出たので少しだけ。Qualcommと、中国のDRAMメーカーCXMTとの間で、3D DRAM開発の記事が出ているようだ。3D DRAM NPUと書いてあるので、NPUにDRAMを積層するということかもしれない。3DやNPUを抜きにしても、QualcommはDRAM不足の影響が大きいのではないと、言われていたと思う。中国のDRAMメーカーと手を組む可能性はあると思われる。

  • NVIDIAでもう一つ。先日からNVIDIAの時価総額が5兆ドルを上回ったとの記事が相次いでいる。5兆ドルという数字を見てもピンとこない。どれくらいかというと、IMFから出ている2026年の名目GDP予測と比べてみると、5兆ドル以上のGDPになると見られるのは米国と中国しかないそうだ。株価もGDPも、創出した価値の総額と言えば比較は可能かもしれない。一企業でそういう数字になるのはちょっと信じがたいが、とてつもない額であることがわかる。さしずめCEOは国家元首なみと言ったところだろうか。

  • 時価総額の話でもうひとつ。台湾の株式市場が、時価総額ベースで世界の株好き市場の中で米中日印加につぐ6位となったようだ。台湾の経済規模は1兆ドル弱だが、7位の英国の4.3兆ドルにくらべると経済規模は4分の1以下だが、株式市場は大きく賑わっていることになる。

2026年4月24日

  • そうえいば、インテルの株価が急騰して、2000年代のドットコムバブルの株価を越えたらしい。

もう2年半前になるが、2024年の11月の初めに、インテルがダウ平均銘柄から外れ、その後は長い低迷期に入っていったと思う。12月にはパット・ゲルジンガーCEOが退任し、どうなることかと思っていたが、翌年5月ごろに就任したリップ・ブー・タンCEOがこの1年をかけて、ようやく回復してきたというところかもしれない。AI需要が推論重視に傾いたことで、CPU需要が伸びたことも大きいと思われる。半導体への投資と回収の期間は、投資家の思惑には合わないとパット・ゲルシンガーが言っていたと思うが、リップブータンCEOがブレずに頑張って耐えていたのは、ゲルシンガー氏の言葉を体現しているようにも思われる。

  • CPUつながりでAMDの話題。

AMDが提供するEXPOが1.2になったという記事が出ている。EXPOとはEXtended Profiles for Overclockingの略で、AMD製CPUに対応するDIMMのタイミング調節などを行う機能のことらしい。今回はMRDIMMへの対応と、メモリ不足への対策として中国メーカーの数社のDIMMに対応したようだ。Zen6向けの準備と思われる。Zen5世代としては、Ryzen系のパソコンのマザーボードにCUDIMMを挿しても、バイパスモードでUDIMM動作になるようだ。EPYCのTurinは、IOチップのメモリコントローラ―がRDIMM対応で、MRDIMMは、まだ使えなかったと思う。これらはZen6世代で使えるようになるようだ。

個人的にAMDのCPUでパソコンを組んだことは無いのだが、何年か前に間違えてEXPO対応のメモリを買ったことがある。64GBを2組買った。つまり32GB x4枚。同規格のDIMMの中で、なぜか他より少し安かった。返品しようかと思ったが、EXPOってなんだろうと調べてみたら、メモリ設定プロファイルだというので、基本性能は出るのだろうと理解して、そのままインテルCPUのマザーボードに使うことにした。現在も奥さんのパソコンで無事に使えている。(メモリが潤沢で快適なようだ)

  • 次に違う話題でNVIDIA関連。
NVIDIAがOpenAIのChatGPT 5.5を搭載したCodexを1万人を超える全従業員に展開したようだ。10万基のNVIDIA GB200の上で動作しており、チャットボットは従業員と会話をし、エージェントは業務をしていると記事は伝えている。エージェントはセキュアな仮想環境内にいて、企業データにアクセスはできるが、削除や変更はできないようになっているとのこと。開発現場だけではなく、法務・財務・営業といったエンジニアリング以外の部門でも使っていると記事は伝えている。
  • NVIDIA関連でもうひとつ。
NVIDIA製GPUインスタンスへのアクセスが困難になっているという記事が出ている。大手のCloud Service Provider(CSP)では、データセンター内のNVIDIA製GPUインスタンスを、自社内や大口顧客に優先的に提供している状況らしく、スタートアップなどの小口の顧客は予約待ちになっているようだ。大規模なトレーニングなどを実施する場合は、おそらく同一クラスタ内のベアメタルが確保されるため、小口の顧客は締め出されているのではないかと思われる。

  • データセンターつながりでMetaの話題。
MetaがAWSのGraviton5を大量に購入したようだ。3年間から5年間にわたる数十億ドルの契約と見られている。コアの数では数千万コアに相当するとのことで、Graviton5が192コアなので数十万チップに相当すると見られる。ただし、チップとして購入したのか、AWS上でのインスタンスを買い占めたのかはよくわからなかった。3月中旬のGTCではNVIDIA Vera CPUラックの納入先として、また3月末ごろ発表のArm AGI CPUの発表では主要な納入先候補として、Metaの名前が挙がっていたと思う。おそらく、NVIDIA VeraもArm AGI CPUも製造はこれからであると考えると、目先のCPUはGraviton5というだろうか。

納入先としては、Metaが計画しているデータセンター(Project Prometheus)が、そろそろ稼働するタイミングではないかと思う。1GW級のデータセンターと言われている。Prometheusで稼働するMTIAにリクエストを送るのがAWS Grviton5ということになるのかもしれない。そしてその後のProject Hyperionは5GW級で、そこではVeraとArm AGI CPUと次期MTIAが稼働するのかもしれない。Metaに限らないが、AIデータセンター各社のプロジェクトの規模もさることながら、すごい資本力だと思わざるを得ない。 

  • 最後にLinuxの話題。
Linuxのカーネルから、古いネットワークドライバが削除されているようだ。ISDNやPCMCIA(いわゆるPCカード規格)のネットワークドライバが対象になっているとのこと。AIがコーディングする中で、古いドライバに関連するエラーが増えてきたらしく、削除が進んでいるようだ。先日のAnthropic Claude Mythosのレポートでは、20年以上前のドライバ関連で、知られていなかった脆弱性が見つかったとの記事もあったかと思う。PCカードという名称は久しぶりに聞いた気がする。Type-Iのメモリカードやモデムカードを使っていた。

こういった、古い機器のドライバが誰にも気づかれなかった脆弱性を持っている、ということは容易に考えられる。こうなると、昔のものを含むこと自体が、リスクとなり始めているのかもしれない。いっそのこと、AIが自動的に穴をふさいだドライバを書いてくれると良いのだが。新しい危機に対応するドライバは、そうなっていくのかもしれない。

2026年4月23日

  • ということで、TSMCテクノロジシンポジウムについて、記事が多く出てきているようだ。

今回の北米シンポジウムでは、先端ロジックプロセスのロードマップの更新で、A13プロセスとA12プロセスが発表された。おそらくこれが目玉だと思われる。2029年に同年内に提供されるらしい。先端ノードが2段階、同年内に提供というのは、初めてのような気がする。両方ともA14プロセスの改良版となっている。

A12はSuper Power Rail(SPR)と呼ぶTSMCの背面給電に対応したプロセスとのこと。SPRはA16とA12ということになるようだ。単純な想像だが、A14を改良して少しシュリンクしてA13としたところに、SPRを適用するとトランジスタ側にある電源配線が背面に回るので、もう少しシュリンクできるような気がする。そうするとA12と名乗ることが出来るのかもしれない。見方を変えると、A14の改良版で、SPR無しがA13、SPR有りがA12ということかと思ったが、どうだろうか。 

一方、A16プロセスが2027年にシフトようだ。これも少しサプライズかもしれない。NVIDIAのFeynmanに適用されると言われていたような気がするが、Feynmanが2028年と言われているので、ロードマップ上は間に合うと見られる。また、新規開発のA14プロセスは2028年で 変わらないが、N2/N2Pの改良版N2Uが、2028年にA14と同時に登場となっている。去年はN3系の改良版があったが、N2が昨年末に量産開始となったので、今年はN3の改良版が出ていないようだ。もうひとつ意外だったのは、ASMLのHigh-NA EUVはまだ導入しないという点で、どうもコスト的に高すぎて導入を見送ったらしい。現行のEUVで、A12プロセスまで進められると判断したようだ。(おかげでASMLの株価は下がったらしいが)

また、最近重要性を増しているパッケージングについても、CoWoSの大型化についてロードマップを更新したようだ。CoWoS-Lは現在5.5レチクルで、2027年に9.5レチクル、2028年に14レチクルを目指すとのこと。14レチクルになると、10チップ+20HBMの規模らしい。2029年は14レチクルを越えるCoWoS-Lと並行して、40レチクルのSoW-X(System-on-Wafer X)が実用段階に入るとしている。3D-ICも現在の9umピッチから6umピッチへ移行し、2029年には4.5umピッチでA14-to-A14スタッキングを可能にするらしい。チップレット時代になって、パッケージングはシリコンチップが露光エリアのサイズ(レチクル)の限界を超えて性能を拡張していくための重要な手段となった。コストの面からも、適材適所な半導体プロセスで製造されたチップを、ひとつのパッケージに封入していくことになる。

工場の増設については、アリゾナのFab21に4つめの工場(P4)を建設を始めたと公表したようだ。全部で6つ作ることになっていたと思う。P2が3nmで2027年後半に製造開始となっている。P3がパッケージング工場と見られる。今回公表されたP4は2nmらしい。2nmは台湾でもFab20で製造中だが、Fab22(高雄)の建設が進んでいる。台湾とアリゾナで同時に建設をすすめているということになる。また、2nmプロセスは先端ロジックのN2Uに加えて、自動運転向けN2Aが発表されたようだ。

他にも特殊用途として、コンシューマ向け高電圧FinFETのN16HVプロセスを発表したとのこと。ディスプレイドライバ用途としており、スマートグラスなどへの応用を見込んでいると思われる。

次のTSMCテクノロジシンポジウムは、本拠地台湾で開催の予定。 

  • 半導体続きでインテルの話題。

インテルファウンドリのIntel 14Aプロセスの最初の顧客は、どうやらイーロン・マスクのSpace Xらしい。テラファブの代替製造と見られる。ちなみに、インテルファウンドリからの発表は、まだないようだ。テラファブ構想は、テキサスに2つの2nmプロセスの半導体工場を建設するというものだが、実現性はよくわからない。台湾で半導体プロセスに関する人材募集をしているという情報もあり、いつになったらチップができるのか、非常に不透明な状況と言える。それを踏まえると、並行してインテルファウンドリを採用するのは理に適っていると思う。しかし、テラファブが目指す生産量はインテルでは賄いきれないことも確かだと思う。加えて、14Aプロセスを製造するオハイオ工場は、完成が2030年から2031年にかけてと見られている。これを加速するための取組みが始まるということだろうか。

  • 少し変わってIBMの話題。

IBMの第1四半期の決算発表が出ているようだ。業績は悪くないが、決算発表後に株価が落ちたようだ。(IBMだけでなくSalesForceも下落したので、まだCaludeショックやSaaS終末論が影を落としているのかもしれない) IBM社としては、このAIの波は事業推進の追い風ととらえている。当然ながら、決してAIにやられて滅んでいく会社とは考えていないようだ。z17のメインフレームなどのハードウェア事業だけでなく、RedHat事業もあるし、Watson-x AI事業やコンサルティング事業もある。今回、IBMとGoogle Cloudの連携について、IBMからプレスリリースが出ており、Google Cloud Marketplace経由でIBMのクラウドサービスが提供されるようだ。

私個人がクラウドコンピューティングという言葉に初めて触れたのは、2011年ごろにIBMが発刊していたJournal of Research and DevelopmentというIBMの技術情報誌だったような気がする。残念ながら4・5年前に休刊してしまったが、IBMのテクノロジーについて解説していた情報誌で、よく読んでいた。(今読もうと思うと、IEEE Xploreで別料金を取られたと思う)

  • Googleつながりで次の話題。

GoogleのTPUv8ax/xが、TPU8t/iに整理されたようだ。これまで学習用TPUv8x(ZebraFish)と、推論用TPUv8x(SunFish)としていたが、それぞれ学習用をTPU 8t、推論用をTPU 8iとしたとのこと。名称が変わっただけで半導体プロセスや担当するASICベンダーなどが変わったわけではないようだ。ax/xだとどっちが学習でどっちが推論だっけと思うことが多かったが、ひょっとしたら関係者の間でもそうだったのだろうか。

  • Google関連でもう一つ。

Google Cloud Serviceに、NVIDIA Vera Rubinのベアメタルサーバーが入るようだ。A5Xインスタンスとして手配すると、仮想サーバーではなくサーバー装置(ベアメタル)として利用できるらしい。単一サイトで8万基のRubin GPUが稼働でき、マルチサイトで最大96万基までとのことなので、12サイトあるようだ。

  • データセンターつながりで次の話題。

イギリスの通信大手BT社が、欧州データセンター大手Nscale社およびNVIDIAと提携して、ソブリンAIを構築するとの記事が出ている。また、BT社とRackspace Technologyの英国内データセンターでソブリンクラウド構築し、英国の国内でホストの運用を行うとのこと。自国内にデータセンター設備を持ち、データを国内で管理していくことは、データ主権の基本的な要件となりつつあると思う。

  • データセンターでもう一つ。

マイクロソフトのAIデータセンターが予定より早く稼働したようだ。ウィスコンシン州のフェアウォーターにあり、NVIDIA GB200で構築した2GWのAIトレーニング用データセンターとのこと。数十万基のBlackwellと、地球4周分を越えるファイバーケーブルで構成されているらしい。マイクロソフトによると、全米で今後70ヶ所を越える同様の施設を建設する予定とのこと。

2026年4月22日

  • そういえば、今年のTSMCのテクノロジシンポジウムが始まったようだ。正式名称はTSMC 2026 North America Technology Symposiumとなっている。開催は1日のみだが、North Americaの部分が、ヨーロッパや中国などを巡回するときに変わる。日本に来るのは最後の方で、今年は7月の初めのようだ。例年横浜で開催されている。どこの地域でも内容的に大きな差があるわけではないと思うので、4月の北米シンポジウムのプレス記事やニュース記事を読んでおくと、予備知識としてはだいたい手に入ると思われる。記事が増えたらまとめてみたい。
  • ということで次の話題。Appleが、macOS27でIntel製CPUを使ったMacのサポートを打ち切るという記事が出ている。macOS27は9月にリリースと見られる。AppleのM1が登場する2020年以前までは、Intel製のCPUが使われていたが、MシリーズのいわゆるAppleシリコンが登場して、7年でOSのサポートが終了するということになる。この間、AppleシリコンはM5まで進んできており、次期のM6(TSMC N3Pプロセス)については、今年出るかと見られていたが、2027年に延期される可能性があると記事は伝えている。DRAMの高騰やフラッシュメモリの不足が影響しているようだ。
  • 話は変わってNVIDIAの出資関連。VAST Date社の資金調達ラウンドにNvidiaが参加し、出資するようだ。NVIDIAの出資額はわからないが、VAST社の調達額は10億ドルらしい。VAST社は、大量のデータ管理のためのソフトウェアインフラを開発しているとのこと。主要顧客はCoreWeave、Mistral、US Air Force、Cursorなど。AIアプリケーションに重点を置いており、数百万GPUが稼働するプロジェクトをサポートしている実績があると、記事は伝えている。CoreWeaveはNVIDIAが出資しているデータセンターだったと思う。CursorはAnysphere社が提供しているAIコードエディタで、NVIDIAも導入していたと思う。
  • 最後に量子コンピュータの話題。IBMがルーマニアに量子コンピュータを設置するとの記事が出ているようだ。2026年10月にFreeYa Mind Campus内に、IBM Quantum System Twoが設置される予定とのこと。FreeYa Mind Campusは、中央・東ヨーロッパ初の民間量子インフラセンターらしい。欧州委員会は2025年にポスト量子化暗号(PQC: Post Quantum Cryptography)に関するロードマップを作成しており、加盟各国は対応を進めることになっている。

2026年4月21日

  • そうえいば、AMDがCo-Packaged Optics (CPO)関連でGlobalFoundriesと協業するという記事が出ているようだ。

AMDの次世代AIアクセラレータMI-500シリーズに向けて、光集積回路(PIC)のチップ製造をGlobalFoundriesに委託するらしい。組立はASEが行うとのこと。AIデータセンター内の接続では、低消費電力化のために銅配線から光配線への移行は不可避と見られている。MI-500は2027年に登場の予定で、CPUはEPYC Verano (Zen6)との組み合わせと思われる。今年の後半にはHeilosラックシステムが投入されると思われるが、AIアクセラレータはMI-400、CPUはEPYC Venice (Zen6)、NICはAMD Pensandoで、光スイッチはBroadcomのTomahawk-6が採用されていたと思う。次世代となるMI-500世代もPensandoを使うようだが、Tomahawkを今回のGF製PICと置き換えるのかもしれないが、どうだろうか。

GlobalFoundries(略してGF)は、もともとAMDの半導体製造部門だったと思う。2009年に独立して、その後、2015年ごろにIBMの半導体部門が合体したり、7nmプロセス開発から降りてIBMともめたりしていたような気がする。AMDとはFinFETプロセスのチップを提供するなどでCPU製造を支えていたが、7nm以降には進まないことになったので、AMDはTSMCに乗り換えることになったと記憶している。チップレット時代の幕開けを告げたAMD EPYCの初代Naples (Zen、このときはCCDのみだった)と、2代目のRome (Zen2)のIOチップレットはGF製14nmプロセスで、Milan (Zen3)のIOチップレットがGF製12nmプロセスだったと思う。GenoaのZen4以降はIOチップレットもTSMC製になった。今回はEPYC以外のPICで、再びGFと提携することになったということだろう。

  • もうひとつAMD関連。

AMDのRyzenシリーズで、3D V-Cache構造のCCDを2つ搭載したRyzen 9 9950X3D2のベンチマーク記事が出ているようだ。Zen5の16コア全部でL3キャッシュが192MBという贅沢なつくりとなっている。全コアでコア当りのL3キャッシュ容量が12MB(論理コア当り6MB)となる。その前のRyzen 9 9950X3Dでは、3D V-Cache構造のCCDが1つだった。つまり、標準のL3キャッシュ容量32MBのCCDが8コアと、3D V-Cache構造で92MBのCCDが8コアで、合計128MBだった。これはキャッシュが潤沢に使えるCCDと、そうでないCCDの組合せということになる。このX3D2とX3Dの比較結果が出ているが、X3D2の方が価格が200ドルほど高額にもかかわらず、従来のベンチマークでは性能差がほとんどない結果となっている。ゲーミングユーザーにとってはすこし残念な結果となっているようだ。

ただし、AMDとしてはX3D2はゲーム用途のCPUとは言っておらず、プロフェッショナル向けのレイテンシ感度が高いワークロード用と言っているようだ。(箱にそう書いてある) ベンチマークの比較では、ほとんど差が無かったとなっているが、重たいワークロードでもコア当り12MBのキャッシュをもつCCD1個で用が足りているとしたら、X3DがX3D2になる効果はほとんど無いのではないかと思う。ベンチマークソフトはデータがキャッシュに入ってしまえば、あとは動作周波数と、演算器~キャッシュ間の帯域と、クロック当り命令実行数(IPC)などで決まってしまうからだ。また、CCD間の通信が発生するとIOチップを経由するのでレイテンシが大きくなるが、それはX3D2でも改善はしない。X3Dに比べて、X3D2の大きな効果が見られたベンチマークとしては、ビデオエンコーディングや、OpenFOAM(流体解析)、Poisson(2次元方程式)などだったようだ。エンコーディングはキャッシュが大きい方が有利だし、OpenFOAMやPoissonはHPC用途で見られるベンチマークだと思う。他にも、AIでRAGを行う場合に効果があると伝えている記事があるようだ。

また、Ryzen 9 9950X3D2のサンプル提供については、AMDが数を絞っているという記事もあった。先にも書いたがゲーム用途ではなく、高額でプロフェッショナル用途ということで、AMDとしては一般向けとは少し違うという姿勢があるのかもしれない。とはいえ、ひととおりゲームやそのほかのベンチマークで高い割には違いが無いという評価も、重要な意味があると思う。

ちなみに、Zen5で採用されたX3DとX3D2は第2世代3D V-Cacheと言っており、Zen3・Zen4世代での第1世代の3D V-Cacheとは、コアチップとメモリチップの上下が入れ替わっている。つまり今までコアチップの上にメモリチップを搭載していたが、第2世代は下にメモリチップがあって、その上にコアチップを搭載している。この方が、コアチップの背面に放熱用のヒートスプレッダーが直接当たるので、冷却で有利になるらしい。冷却が有利だと動作周波数が挙げられるし、周波数が上がるということは性能が上がるということだ。冷却能力が性能に影響するのは、ここ10年くらいの常識となっている。

さて、3D V-Caheの第1世代と第2世代の違いは、言葉で書くとメモリとコアの上下関係が入れ替わっただけと思うかもしれないが、実装構造上では、わりと複雑な変更になると思う。第1世代では、コアチップの背面にTSV(シリコン貫通ビア)を開けて、メモリチップを実装していたと思う。CCDは通常のフリップチップ実装(C4バンプ)で、表面(端子面)が下を向いている。背面のシリコンにTSVが途中まで埋め込んであって、背面を削ってシリコン層を薄くすると端子が出てくる。メモリチップはそのTSVの端子に合わせて表面に端子があり、CCDの背中に載せることで、L3キャッシュメモリを増設している。 メモリの表面(Face)をCCDの背面(Back)に接合するので、Face-to-Back接続と呼ばれている。メモリチップが背中に乗るのでキャッシュ容量は増えるが、コアの発熱は抜けにくくなるというトレードオフがあった。

第2世代では、メモリチップの背面にTSVを開けて端子を形成し、パッケージ基板に接続するための端子(C4バンプ)を出している。こうすると、メモリチップの表面(Face)とCCDの表面(Face)をダイレクトボンディングで接続することが出来る。これは表面と表面なので、Face-to-Face接続と呼ばれている。メモリチップ背面のC4バンプを基板に接続すると、CCDが上になって、背面に冷却用のヒートスプレッダーが直接冷却することができる。メモリチップの背面のC4バンプは、メモリチップのためだけではなく、CCDへの電源供給やIOチップとの通信用、制御系や試験系などの端子を出す必要がある。ちなみにC4バンプというのは鉛と錫の合金でできた、直径100umくらいの半田ボールのことで、C4というのはControlled Collapse Chip Connectionの頭文字から来ている。

ここでちょっと疑問が生じる。X3D2は2つのCCDが3D V-Cacheだが、X3Dは片方が普通のCCDというこで、メモリチップが無いCCDの端子面はC4バンプになっている必要がある。つまり、メモリチップに張合わせるCCDと、基板に直接載せるCCDの2つがあることになる。おそらくメモリチップに張合わせるダイレクトボンディング仕様のCCDに対して、C4バンプパッドを形成する追加工程があると思われる。ただし、ダイレクトボンディングは9umとか6um、次世代は4.5umくらいの端子ピッチであるのに対して、C4バンプパッドは昔から150umピッチくらいだったと思う。15倍から30倍くらいスケールが違うので、単純にC4バンプパッドを置くわけにはいかないと思われる。

しかしよく考えると、ダイレクトボンディングはメモリを増設するための接続端子なので、電源に加えてデータやアドレスや制御線等の端子がたくさんあるはずだ。CCDからC4バンプに接続するのは、電源供給とIOチップとの通信用、制御系や試験系で、メモリチップの背面に出す端子と同じ本数(もちろん同じ並び)でよい。ということは、ダイレクトボンディング用の端子はいったん絶縁層で埋めてしまい、C4バンプに出す端子だけ、窓を開けて引き出すにようになっていると思われる。引出し配線が1層ですむのか2層必要なのかわからないが、いわゆる再配線層(RDL)を形成していると思われる。第1世代ではCCDの背面にTSVを埋め込んでおいて削って端子を出していたが、第2世代では絶縁層をかぶせて再配線層を形成していると思うが、どうだろうか。

もちろん、第1世代も第2世代も、半導体プロセスの中でウェハ単位での加工になると思われる。チップとして切り分けた後にできる追加工程とは考えられないので、事前に3D V-Cache仕様のCCDをどれだけ製造するのか、普通のCCDと分けてオーダーしておく必要があるだろう。半導体プロセスの話になるとつい長くなる。

  • CPUつながりで次の話題。

Qualcommのクリスチアーノ・アモンCEOが韓国を訪問するらしい。サムスンとSKハイニクスへ行く予定とのこと。Snapdragon 8 Elite Gen2をサムスンの2nmプロセス(SF2)で製造するのではないかとの記事は伝えている。わかりにくいがSnapdragon 8 Elite Gen2 (EliteのGen2)とは、Snapdragon 8 Elite Gen5 (Snapdragon 8のGen5)のことで、すでにTSMCの3nmプロセスで製造している。今回は派製品をSF2で製造するのではないかとのこと。TSMC3nmはFinFETで、サムスン2nmはGAAトランジスタだったと思うが、同じ設計でトランジスタ型をまたいだ実例となるのであれば、少し興味深いと思う。SKハイニクスではLPDDR5の調達について、交渉すると見られている。

  • 最後にTSMCの話題。

TSMC高雄のFab22は5つの2nmプロセスラインを構築する予定らしいが、年間の総電力量が112億kWhと見られているようだ。単位の桁数が大きくて良くわからないが、年間のWhなので、たとえば1Wだと1年間の電力量は、1Wx365日×24hで8.76kWhになる。つまり、年間の総電力量112億kWhを8.76kWhで割れば、Wに換算出来る。112億k÷8.76kは12.8億Wで、1,280,000,000Wと表記すると1.28GWである。原発1基が1GWと言われており、高雄のFab22の年間電力を賄うためには、原発1.3基分を常時稼働する必要があるようだ。

上の方で、プロセッサの性能は冷却能力が決める時代に入っていると書いたが、システムの性能は電力供給能力が決める時代に入っていると思う。ファンやポンプは駆動系だが、半導体そのものは駆動系を持たない。つまり半導体に供給した電力はそのまま発熱となる。たとえばプロセッサに1GWを供給するということは、1GWを冷却するということだ。その供給と冷却の枠の中で、どれだけの性能を獲得できるかが、アーキテクトと回路設計、ソフト開発やシステム開発の腕の見せ所だと思う。

2026年4月20日

  • そういえば、AWSがAnthropicに250億ドルの追加投資をするようだ。

当面50億ドルを投資し、マイルストーンの達成に応じて、さらに最大200億ドルを追加するとのこと。AWSはすでに80億ドルをAnthropicに投資している経緯がある。逆にAnthropicは、AWSに今後10年間で1000億ドルの投資を行うらしい。AWSのTrainiumとGravitonを確保する狙いがあるようだ。今年中に、Trainium2/3で構成する1GWと、将来的に5GWまで確保しているとのこと。現在開発中の、Trainium4が含まれていると思われる。AWSの顧客は、すでにAmazon Bedrock上でAnthropic Claudeを使用できるが、AnthropicはClaudeに対する需要が急増したため、インフラを急いで増強する必要に迫られていると見られる。

  • AIつながりで次の話題。

PositronがOracleと提携したようだ。Positron AIは推論チップを開発しているスタートアップで、2026年後半にAsimov(TSMC N3Pプロセス)というカスタムASICチップをリリースする予定とのこと。現在はAtlasというFPGA+HBMの推論チップを展開しており、Cloudflareなどで実績があるらしい。AsimovはLPDDRメモリを採用しているが、チップ当たり2TBを扱うことが出来るとしている。AsimovがOracle Cloud Infrastructureで実績を積むことが出来れば、空冷で動作するので電力密度の低いCSP向けに展開していくことを考えているようだ。

  • AI関連でもう一つ。

IBMのアーヴィンド・クリシュナCEOが、AIと量子コンピュータの導入についてコメントを出したという記事が出ている。2月のAnthropicショック(COBOL書換えのClaude Codeによる自動化)によってIBMの株価は低下したが、IBM自身がAI推進に力を入れていることを強調しており、同時に量子コンピュータの開発と応用に力を入れていると記事は伝えている。コメントの中では、テクノロジーはこれまで企業活動を支援するものであったが、これからは企業活動そのものを左右する存在へと変わっていることに、まだ多くの企業が対応できていないのではないか、と述べている。

産業革命以来、科学技術(テクノロジー)が産業の発達を促してきたが、テクノロジーそのものが企業活動として成り立ってきたかというと、そうでもない気がする。たしかに鉄鋼や石油・化学などは科学技術そのものだったのだろうと思うが、それらが発達を促したのは、自動車や船舶・航空などの交通機関と、紡績や土木建設などの機械化であった。そのうえに都市整備や流通網、商社などの産業があり、さらにその上に市場や小売りなどのサービスを行う会社がある、という具合ではなかっただろうか。つまり、流通や加工などの産業よりもうえの層は、産業革命以前にもあった構造だが、テクノロジーが機械化を推進し、人間が苦手な移動や建設などで以前ほど苦労をしなくてよくなって、社会が変わったという構図だったのではないかと思う。この、基礎となっているテクノロジーと、一番上にある社会全般の企業とは、少し距離があったと思う。

一方で、家電とともに情報・通信産業が発達し、1960年代から半導体産業が発達し始める。テクノロジーとしては、電子・物性を基盤としていると思う。機械化が進んだ社会の中で、電信電話・コンピュータ・インターネット・通信衛星などが発達した。2000年を越えてスマホが普及すると、半導体が地球上に蔓延して、いろんな産業の基礎に入り込んだと言ってよいのではないかと思う。短絡的かもしれないが、半導体上に形成した電子計算機とソフトウェアで人間の応用力が解放され、情報通信社会が発達した。人間の苦手な計算で苦労しなくてよくなり、都市部の生活が一変してしまったと思う。そして、その情報通信社会の中心企業がIBMだった、ということかと思う。もちろんこれが、現在のAIにつながっている。

半導体テクノロジーの特徴は小型・高速であることとだと思う。半導体を基盤とすることで、科学技術の変化が産業を変え、産業の変化がサービスを行う企業を変えるまでのタイムラグがどんどん短くなっていると思う。テクノロジーへの理解は、もはや「あった方が良い」ではなく「無いと困る」というものなのかもしれない。ここでいうテクノロジーへの理解とは、テクノロジーにどれだけコストを割くかということだ。企業の経営層がテクノロジーにどれだけコストをかけるかで、どれだけ素早く変われるか、ということが問われているのではないだろうか。ダーウィンの進化論は、強者が生き残るのではなく、変化に適応したものが生き残るということを示していたと思う。

IBMのCEOがテクノロジーと企業活動の距離を語るということは、以上のような経緯を踏まえたほうが、真の意味がわかるような気がした。

  • CEOつながりで次の話題。

AppleのCEOが交代するようだ。現在のティム・クックCEOは、9月1に15年の任期を終えて退任し、新しいCEOとしてジョン・ターナス氏が就任するとのこと。ターナス氏は現在、ハードウェア担当上級副社長を務めているとのこと。クックCEOの在任中に世の中に出た主なデバイスは、Apple Watch、Air Pods、Vision Proということになるようだ。しかし、なによりもiPhone事業が拡大の一途をたどっていった、堅実な手腕が評価されるべきかもしれない。次期CEOは、遅れていると言われるAI分野への進出が、クリヤするべき課題になると見られる。

上の話につながるが、次の変化は半導体テクノロジーを基盤としたAI産業の発達ということになるだろう。AIはまだ企業での活用を模索している段階で、個人の嗜好に入り込むのはもう少し先のような気がしている。現在の、エージェンティックAIがビジネスをサポートするような規模の話は産業界の話だと思う。GPUやNPU、CPUが大量に必要だと言っているのはそのレイヤの話で、ただいまデータセンターの準備中である。いま個人でAIを使って文章や絵や動画を生成している人は、プロかハイアマチュアが中心ではないかと思う。プロと言っても昔のような大手のメディアではなく、YouTubeをはじめとしたSNSで稼げる世の中になっているので、誰でもプロになれる世の中になっている。産業界も個人も通して見ると、AIはお金を稼ぐ前提で活用されているような気がしている。(個人で楽しんでいるのは他からはわからないものではあるが)

AIがすべてを加速していくのであれば、社会を変えていくのも早いような気がする。何気ない個人の日常でAIが役に立つ場面は、写真の背景を変える以外にも、もっとあるだろう。AI産業が人間の苦手なものを開放してくれることで、次の社会の変化が訪れるはずだ。計画を立てたり、絵をかいて説明したり、関係者と調整したりすることかもしれない。おそらく、変化の準備は完了していると思われる。AppleやAndroidに搭載されたAIが、AIに支えられた生活の変化を一気に推し進めるときに、その次世代のデバイスが飛躍的に普及するのではないだろうか。スマートフォンに限った話でもないと思し、ひょっとすると最近話題になっているスマートグラスかもしれない。おそらくAppleやAndroidは、タイミングを計っているのではないだろうか。

共通な構造としては、テクノロジーの発達がインフラの変化を推進することで、その上に乗る産業基盤を変質させ、人間が苦手としているものを開放し、サービス企業を変えていく、ということかと思う。推進してきた変化は機械化、情報化、AI化の流れとなっている。テクノロジー・インフラ・変化原理・苦手なもの・サービス、の5つの層(ケーキとは言わないが)で分けてみると、判りやすいのかもしれない。

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