◆ということで、TSMCテクノロジシンポジウムについて、記事が多く出てきているようだ。今回の北米シンポジウムでは、先端ロジックプロセスのロードマップの更新で、A13プロセスとA12プロセスが発表された。おそらくこれが目玉だと思われる。2029年に同年内に提供されるらしい。先端ノードが2段階、同年内に提供というのは、初めてのような気がする。両方ともA14プロセスの改良版となっている。
A12はSuper Power Rail(SPR)と呼ぶTSMCの背面給電に対応したプロセスとのこと。SPRはA16とA12ということになるようだ。単純な想像だが、A14を改良して少しシュリンクしてA13としたところに、SPRを適用するとトランジスタ側にある電源配線が背面に回るので、もう少しシュリンクできるような気がする。そうするとA12と名乗ることが出来るのかもしれない。見方を変えると、A14の改良版で、SPR無しがA13、SPR有りがA12ということかと思ったが、どうだろうか。
一方、A16プロセスが2027年にシフトようだ。これも少しサプライズかもしれない。NVIDIAのFeynmanに適用されると言われていたような気がするが、Feynmanが2028年と言われているので、ロードマップ上は間に合うと見られる。また、新規開発のA14プロセスは2028年で 変わらないが、N2/N2Pの改良版N2Uが、2028年にA14と同時に登場となっている。去年はN3系の改良版があったが、N2が昨年末に量産開始となったので、今年はN3の改良版が出ていないようだ。もうひとつ意外だったのは、ASMLのHigh-NA EUVはまだ導入しないという点で、どうもコスト的に高すぎて導入を見送ったらしい。現行のEUVで、A12プロセスまで進められると判断したようだ。(おかげでASMLの株価は下がったらしいが)
また、最近重要性を増しているパッケージングについても、CoWoSの大型化についてロードマップを更新したようだ。CoWoS-Lは現在5.5レチクルで、2027年に9.5レチクル、2028年に14レチクルを目指すとのこと。14レチクルになると、10チップ+20HBMの規模らしい。2029年は14レチクルを越えるCoWoS-Lと並行して、40レチクルのSoW-X(System-on-Wafer X)が実用段階に入るとしている。3D-ICも現在の9umピッチから6umピッチへ移行し、2029年には4.5umピッチでA14-to-A14スタッキングを可能にするらしい。チップレット時代になって、パッケージングはシリコンチップが露光エリアのサイズ(レチクル)の限界を超えて性能を拡張していくための重要な手段となった。コストの面からも、適材適所な半導体プロセスで製造されたチップを、ひとつのパッケージに封入していくことになる。
工場の増設については、アリゾナのFab21に4つめの工場(P4)を建設を始めたと公表したようだ。全部で6つ作ることになっていたと思う。P2が3nmで2027年後半に製造開始となっている。P3がパッケージング工場と見られる。今回公表されたP4は2nmらしい。2nmは台湾でもFab20で製造中だが、Fab22(高雄)の建設が進んでいる。台湾とアリゾナで同時に建設をすすめているということになる。また、2nmプロセスは先端ロジックのN2Uに加えて、自動運転向けN2Aが発表されたようだ。
他にも特殊用途として、コンシューマ向け高電圧FinFETのN16HVプロセスを発表したとのこと。ディスプレイドライバ用途としており、スマートグラスなどへの応用を見込んでいると思われる。
次のTSMCテクノロジシンポジウムは、本拠地台湾で開催の予定。
半導体続きでインテルの話題。インテルファウンドリのIntel 14Aプロセスの最初の顧客は、どうやらイーロン・マスクのSpace Xらしい。テラファブの代替製造と見られる。ちなみに、インテルファウンドリからの発表は、まだないようだ。テラファブ構想は、テキサスに2つの2nmプロセスの半導体工場を建設するというものだが、実現性はよくわからない。台湾で半導体プロセスに関する人材募集をしているという情報もあり、いつになったらチップができるのか、非常に不透明な状況と言える。それを踏まえると、並行してインテルファウンドリを採用するのは理に適っていると思う。しかし、テラファブが目指す生産量はインテルでは賄いきれないことも確かだと思う。加えて、14Aプロセスを製造するオハイオ工場は、完成が2030年から2031年にかけてと見られている。これを加速するための取組みが始まるということだろうか。
少し変わってIBMの話題。IBMの第1四半期の決算発表が出ているようだ。業績は悪くないが、決算発表後に株価が落ちたようだ。(IBMだけでなくSalesForceも下落したので、まだCaludeショックやSaaS終末論が影を落としているのかもしれない) IBM社としては、このAIの波は事業推進の追い風ととらえている。当然ながら、決してAIにやられて滅んでいく会社とは考えていないようだ。z17のメインフレームなどのハードウェア事業だけでなく、RedHat事業もあるし、Watson-x AI事業やコンサルティング事業もある。今回、IBMとGoogle Cloudの連携について、IBMからプレスリリースが出ており、Google Cloud Marketplace経由でIBMのクラウドサービスが提供されるようだ。
私個人がクラウドコンピューティングという言葉に初めて触れたのは、2011年ごろにIBMが発刊していたJournal of Research and DevelopmentというIBMの技術情報誌だったような気がする。残念ながら4・5年前に休刊してしまったが、IBMのテクノロジーについて解説していた情報誌で、よく読んでいた。(今読もうと思うと、IEEE Xploreで別料金を取られたと思う)
Googleつながりで次の話題。GoogleのTPUv8ax/xが、TPU8t/iに整理されたようだ。これまで学習用TPUv8x(ZebraFish)と、推論用TPUv8x(SunFish)としていたが、それぞれ学習用をTPU 8t、推論用をTPU 8iとしたとのこと。名称が変わっただけで半導体プロセスや担当するASICベンダーなどが変わったわけではないようだ。ax/xだとどっちが学習でどっちが推論だっけと思うことが多かったが、ひょっとしたら関係者の間でもそうだったのだろうか。
Google関連でもう一つ。Google Cloud Serviceに、NVIDIA Vera Rubinのベアメタルサーバーが入るようだ。A5Xインスタンスとして手配すると、仮想サーバーではなくサーバー装置(ベアメタル)として利用できるらしい。単一サイトで8万基のRubin GPUが稼働でき、マルチサイトで最大96万基までとのことなので、12サイトあるようだ。
データセンターつながりで次の話題。イギリスの通信大手BT社が、欧州データセンター大手Nscale社およびNVIDIAと提携して、ソブリンAIを構築するとの記事が出ている。また、BT社とRackspace Technologyの英国内データセンターでソブリンクラウド構築し、英国の国内でホストの運用を行うとのこと。自国内にデータセンター設備を持ち、データを国内で管理していくことは、データ主権の基本的な要件となりつつあると思う。
データセンターでもう一つ。マイクロソフトのAIデータセンターが予定より早く稼働したようだ。ウィスコンシン州のフェアウォーターにあり、NVIDIA GB200で構築した2GWのAIトレーニング用データセンターとのこと。数十万基のBlackwellと、地球4周分を越えるファイバーケーブルで構成されているらしい。マイクロソフトによると、全米で今後70ヶ所を越える同様の施設を建設する予定とのこと。